自分で作ったアプリに、自分の弱点を教えられた話

5ヶ月分の記録が出した答え

節約記録アプリを作って、私はほぼ毎日それを使いました。何かを買おうとして、やめる。その金額を入れる。それだけです。

5ヶ月分たまったところで、分析画面を開きました。

そこで分かったことが、自分でも予想していなかった内容でした。

私は「いつも」無駄遣いをしているわけではなかった

アプリを作る前、私は自分をこう認識していました。

「無駄遣いが多い人間だ」

だから記録して直そうと思った。それが動機でした。

ところが記録を見ると、実態は違いました。普段の生活では、我慢できているのです。

理由ははっきりしています。記録するアプリがあるから、無駄遣いを意識できる。 意識できれば、買わずに済む。アプリはちゃんと効いていました。

問題は、そこではありませんでした。

崩れるのは、長期出張のとき

記録が明確に示していたのは、こういうパターンです。

仕事で長期出張に出ると、無駄遣いが抑えられなくなる。

1日や2日の出張なら、普段と変わりません。意識も保てます。

しかし、1週間の宿泊出張が終わり、また次の1週間が始まる——これが続くと、52歳の私には負担が大きい。疲れがすぐに溜まります。

そして、その疲れに起因して無駄遣いが起きていました。

節約記録アプリの記録に、その結果がはっきりと現れていたのです。

私が直すべきなのは「無駄遣いする性格」ではありませんでした。「疲れているときに判断が緩む」という、条件つきの弱点だったのです。

これは、記録がなければ絶対に気づけませんでした。感覚だけで振り返っていたら、私はずっと「自分は意志が弱い」で終わっていたと思います。

データを見て、もっと大事なことに気づいた

記事を書くにあたって、アプリの分析画面を改めて眺め直しました。これが「お店別 節約額」です。

節約記録アプリのお店別 節約額
5ヶ月分の記録。コンビニが単独では最多

コンビニ 11,848円が突出しています。単独の項目では、たしかにコンビニが最多でした。

ところが項目を一つずつ見ていくうちに、自分の記録の中に性質のまったく違う2種類の節約が混ざっていることに気づきました。

① 我慢する節約

コンビニ、アマゾン、駅のキオスク、スーパー、ドラッグストア。

買おうとして、やめた記録です。アイスを我慢した。お菓子を我慢した。血圧計を我慢した。

② 置き換える節約

こちらは、少し性格が違います。

項目 中身 節約額
地下鉄 通勤を地下鉄からレンタル自転車・徒歩に変えた 5,230円
高速道路 休日に魚釣りへ行くとき、高速道路をやめて一般道にした 4,200円
コインパーキング 自家用車で出勤する日に、より安い駐車場に停めた 1,000円

買うのをやめたのではなく、より安い手段に置き換えた記録です。合計で10,430円になります。

この2つの違いが、決定的でした

並べてみて、はっとしました。

我慢する節約は、毎回その場で意志の力を使います。 コンビニの前を通るたびに、アイスの棚を見るたびに、判断が発生する。疲れているとき、この判断は簡単に負けます。

置き換える節約は、一度決めれば意志が要りません。

通勤を自転車に変えたのは、5ヶ月前に一度決めただけです。以降は毎日、何も我慢していません。1回あたりの差額は80円ほど。それが積み重なって5,230円になりました。

疲れていても、自転車は自転車のままです。

つまりこういうことです。

我慢する節約 置き換える節約
判断のタイミング 毎回 一度だけ
疲れたときは 崩れる 崩れない
意志の力 必要 不要

前の章で書いた「出張に出ると無駄遣いが抑えられなくなる」という問題。崩れていたのは、我慢する節約のほうだけでした。

置き換えた通勤手段は、私が疲れていようが出張していようが、勝手に節約し続けてくれていたのです。

金額の話 ― 実は大きな買い物ではない

もう一つ、データを見て自分でも意外だったことがあります。

私の無駄遣いは、たいした金額ではありませんでした。

何万円もするものを衝動買いしているわけではないのです。中身はこういうものでした。

  • もう1つアイスクリームを買おうとした
  • 冷たい飲み物が欲しくなった
  • お菓子を買いたくなった

コンビニでの1回の買い物が、だいたい800円程度。 それが私の「無駄遣い」の正体でした。

アプリの「節約額ランキング」を見ると、それがよく分かります。

節約記録アプリの節約額ランキングTOP10
我慢した金額の大きい順。最高でも4,500円

最高額はアマゾンで我慢した血圧計の4,500円でした。我ながら少しおかしい。血圧記録アプリを作った人間が、血圧計を買うのを我慢しているわけです。

そして上位10件の内訳が、先ほどの2種類にきれいに分かれます。

順位 項目 種類
1 血圧計 4,500円 我慢
2 自分のお土産 1,800円(駅のキオスク) 我慢・出張中
3 駅弁 1,500円(駅のキオスク) 我慢・出張中
4,5,8,9 行き/帰りの高速代(休日の魚釣り) 置き換え
6 行きの高速代(出張) 置き換え
7 アマニ油 1,000円 我慢
10 雑貨 900円(メルカリ) 我慢

2位と3位が、どちらも出張中の駅での我慢です。

「自分のお土産」という項目が我ながら情けないのですが、これは出張帰りの駅で、自分のために何か買いたくなった記録です。疲れて帰るときの、あの気持ちです。

一方、4位・5位・8位・9位を占めているのは休日の魚釣りで一般道を選んだ記録。こちらは我慢ではなく置き換えなので、行くたびに自動的に積み上がっています。

そして注目してほしいのは金額の小ささです。最高額でも4,500円。上位のほとんどが1,000円台。私の無駄遣いは、一撃が小さいのです。

しかし、800円が積み上がる

「800円なら大したことない」と思われるかもしれません。私も記録する前はそう思っていました。

でも計算してみてください。

800円 × 1日2回 × 毎日。

これが1ヶ月積み重なると、無視できない金額になります。大きな買い物より、小さな買い物の連続のほうが効いていた。

これも、記録して初めて見えたことでした。1回ごとの800円は記憶に残りません。積み上がった数字だけが、事実を教えてくれます。

正直なところ、日本の物価上昇が恨めしくもあります。 同じ800円で買えるものが年々減っている。節約の努力が、物価の上昇に食われていく感覚があります。

このアプリが記録していないもの

ここまで数字を並べてきましたが、正直に書いておかなければならないことがあります。

節約記録アプリに残るのは、我慢したものと置き換えたものだけです。

「我慢せずに買ったもの」は、どこにも記録されません。

つまり、5ヶ月で積み上がった約42,000円という数字は、「家計が42,000円改善した」という意味ではありません。 正確には「42,000円分の誘惑に勝った」という記録です。

では、負けた分はどうなっているのか。

正直に書きます。あります。

  • 釣具屋でルアーを何個か買って、6,000円
  • 魚釣りに行ったときの外食で、3,000円

さすがに何万円もするものを衝動買いすることはありません。でも、何千円単位の出費は、しっかりあります。

そしてこれらは、アプリのどこにも出てきません。分析画面をどれだけ眺めても、あのルアー代6,000円は見えないのです。

数字が良く見えすぎるという問題

これは、設計として意図したことでもありました。

前の記事に書いたとおり、私がこのアプリで実現したかったのは「我慢を達成の記録に変える」ことです。使った金額を記録する家計簿は後悔の記録になる。我慢した金額を記録すれば、達成の記録になる。だから続く。

その狙いは当たりました。実際、5ヶ月続いています。

でも続いた代わりに、都合のいい数字だけが手元に残りました。

「今月も1万円節約できた」と表示されれば、気分がいい。しかし同じ月にルアーを6,000円買っていたなら、実質は4,000円です。アプリはそれを教えてくれません。

我慢の記録だけを見て「よくやった」と思っている自分は、少し滑稽でもあります。

では、直すべきなのか

ここで悩んでいます。

支出も記録できるようにすれば、収支の全体像が見えます。実際にいくら改善したのかが分かる。測定としては、明らかにそちらが正しい。

ですが、それをやるとこのアプリが家計簿になります。

家計簿アプリは世の中に無数にあります。優秀なものばかりです。そして私が家計簿を続けられなかったからこそ、「我慢を記録する」という別の形を作ったのでした。

支出の記録を足した瞬間、後悔の記録が混ざり込む。続かなくなるかもしれない。

支出も記録する 我慢の記録に徹する
数字の正確さ ◎ 実態が分かる ✕ 片側しか見えない
続けやすさ ✕ 後悔が混ざる ◎ 達成感が残る
他アプリとの違い ✕ 家計簿と同じ ◎ ほぼ他にない

正しさを取るか、続くことを取るか。

いま、この問題をAIと一緒に検討しているところです。第三の道があるのではないかとも思っています。たとえば「買ってしまった記録」を、責める形ではなく、我慢の記録と並べて残す方法。「今月は15回我慢して、3回負けた」という見せ方なら、後悔ではなく事実として受け止められるかもしれません。

結論が出たら、また記事にします。もし同じような家計管理で悩んでいる方がいたら、ご意見をいただけると嬉しいです。

だからこそ、アプリで稼ぎたい

ここまで書いてきて、自分でも改めて思うことがあります。

支出を切り詰める側には、限界があります。

コンビニで800円我慢する。それは意味のあることですし、実際に効果も出ています。でも、それをどれだけ積み上げても、60歳で半減する収入を埋めることはできません。

我慢で作れる金額には、上限があるのです。

だから、収入を増やす側をやりたい。

このブログのシリーズで書いてきたアプリ開発は、そのための挑戦です。節約記録アプリのデータを見るたびに、その思いが強くなります。

皮肉な話ですが、「節約には限界がある」ということを、節約記録アプリが教えてくれました。

節約アプリを作って良かったこと

最後に、5ヶ月使ってみて感じた価値をまとめておきます。

① 自分の思い込みが訂正された

「無駄遣いが多い性格」ではなく「疲れると緩む」だった。対策がまったく変わります。性格は直せませんが、条件は対策できます。

② 金額の実態が分かった

大きな買い物ではなく、小さな買い物の連続でした。気をつける場所が特定できました。

③ 我慢が可視化されると、我慢しやすくなる

これが一番大きいかもしれません。使った金額を記録する家計簿は「後悔の記録」になりますが、我慢した金額を記録すると「達成の記録」になります。 同じ行動でも、続けやすさがまるで違いました。

出張中の対策は、たぶん「我慢しないこと」

肝心の対策ですが、この記事を書きながら方向が見えてきました。

疲れているときに意志の力で我慢するのは、そもそも無理があります。 出張は会社員である以上なくせませんし、疲れもなくせません。だとすれば、我慢する側で勝負するのが間違っています。

やるべきは、出張中の行動を「置き換える」ことです。

通勤を自転車に変えたときと同じ発想で、たとえばこういうことが考えられます。

  • 出張に出る前に、飲み物とお菓子を家から持っていく(駅のキオスクに寄る理由をなくす)
  • ホテルに着く前にスーパーに寄る(コンビニに行かない)
  • お土産は買わないと最初から決めておく(現地で判断しない)

いずれも共通しているのは、疲れた自分に判断させないという点です。判断は、元気なうちに済ませておく。

これがうまくいくかは、また記録が溜まったら書きます。自分で作ったアプリに自分を測ってもらうというのは、思っていたよりずっと面白い体験です。


この記事のアプリ:節約記録アプリ(紹介ページ)

コメント

タイトルとURLをコピーしました