日付のバグは、3回のラリーで直った ― 血圧記録アプリで、AIには見えない不具合を毎朝使う私が見つけた話

毎朝使い始めて、すぐに気づいた

血圧記録アプリができあがって、私は毎朝それを使い始めました。そして、すぐにおかしなことに気づきます。

このアプリで出会ったバグの中から、とくに忘れられない2つを書きます。1つは、すぐに直ったのに大事なことを教えてくれたバグ。もう1つは、直ったと思っても戻ってきて、3回のラリーでやっと直ったバグです。

1つ目:1文字打つと、キーボードが消える

血圧の数値を入力しようとして「1」と打つ。その瞬間、キーボードが引っ込む。

もう一度タップして「3」と打つ。また引っ込む。「130」と入れるのに、3回タップし直さなければいけない。

私が送ったメッセージはこうです。

記録タブ:・血圧値や心拍数を入力する時に1文字入力すると入力用キーボードの表示が消えてしまう点の改善

ここで大事なのは、AIはこのバグの存在を知らなかったということです。隠していたわけでも、手を抜いたわけでもありません。見えないのです。

AIが見ているのはコードです。コードとして、その部分は正しく書かれていました。パソコンのブラウザで開けば、普通に文字が打てます。

Androidのスマホで、指で画面をタップして、1文字打った瞬間に何が起きるか。 それはコードを読んでも分からない。実際にその端末で、その指で、試した人間にしか分からないことでした。

(技術的に言うと、入力欄に文字が入るたびに画面を描き直していて、そのときに入力欄そのものが作り直されていました。スマホからすると「さっきの入力欄が消えて、新しい入力欄が出てきた」ことになるので、キーボードも閉じてしまう。パソコンでは同じことが起きても、誰も気づきません。)

2つ目:日付が今日にならない。直るまでに3回のラリー

いちばん私を消耗させたのは、こちらです。

アプリを開くと、日付が昨日のまま。 毎回、手で今日の日付に直さないといけない。朝の忙しい時間に、これは地味に効きます。

1回目は、こう頼みました。

アプリを起動したとき、測定日時の日付が現在日(本日)に自動更新されません。スマホの日付と自動で同期させてください。

修正されて、ちゃんと今日の日付が出る。解決。 ……のはずでした。しばらくして、また同じことが起きます。

前回の改善で一度直りましたが、使用している途中でまた測定日時の日付が現在日(本日)に自動更新されなくなりました。

「前回の改善で一度直りましたが」という書き出しに、当時の私の気持ちがにじんでいます。そして、また戻ってきます。3回目のメッセージには、一文を足しました。

測定日時の日付が現在日(本日)に自動更新されません。スマホの日付に同期させてください。時刻は問題なく同期しています。

日付だけがおかしくて、時刻は正しい。この情報があれば、原因の範囲が一気に狭まります。

この3回目のやり取りで、日付のバグはようやく直りました。AIとの3回のラリーでした。

血圧記録アプリの記録画面。測定日時の欄に、その日の日付と時刻が自動で入っている
いまの記録画面。開くと、測定日時にその日の日付と時刻が入っている(入力欄の数字は見本の値です)

なぜ、同じバグが戻ってくるのか

これは個人開発をしていると必ずぶつかる現象で、リグレッション(後戻り)と呼ばれます。理由は、私の場合はっきりしていました。

私は毎回、山ほどの注文を同時に出していたのです。 3回目のメッセージでも、日付の修正と一緒に、Excel の期間指定と、A4 1枚の Word レポートの追加を一度に頼んでいます。

新しい機能を入れれば、コードは書き換わります。書き換われば、前に直した部分がまた壊れることがある。そして私は毎日アプリを使っているので、壊れたことにすぐ気づく。 直す→新機能で壊れる→気づく→直す、というループを、自分で回していたわけです。

2つのバグで分かった、私の役割

私はコードを書けません。書く必要もありません。でも、私にしかできないことがあります。

実機を触って、「おかしい」と気づくこと。

そしてそれを、AIに伝わる言葉にすること。

このバグを見つけた方法は、高度でも何でもありません。毎朝、自分の血圧を記録していただけです。 でも、毎日その順番で、その指で、その画面を触るという体験は、どんなテストの道具も代わりにできません。

言葉のほうも同じです。「なんか使いにくい」では直りません。「1文字入力すると入力用キーボードの表示が消えてしまう」と書けば、直ります。「時刻は問題なく同期しています」のように、壊れているものだけでなく、壊れていないものを書くと、もっと早く直ります。

頼み方が変わった

この2つの経験から、私の頼み方は変わりました。

  1. バグの修正と新しい機能の追加を、なるべく分けて頼む。 同時に頼むと、どちらが原因で何が壊れたのか分からなくなります
  2. 「直った」を自分で確かめるまで、次に進まない。 AIの「修正しました」は「コードを直した」という意味で、「あなたのスマホで直った」という意味ではありません。確かめられるのは私だけです
  3. 症状を細かく書く。 とくに「壊れていないもの」を一緒に書く

正直に書いておくと

3回も同じバグに悩まされて、嫌になったかというと、そうでもありませんでした。

会社の仕事なら、同じミスが3回続いたら誰かが責められます。でもこれは自分のアプリで、自分が使うもので、直せば良くなることが分かっている。

「直せば良くなる」というのは、実はすごく幸せな状況です。

26年のサラリーマン生活で、直しても良くならないことにたくさん出会ってきた身としては、そう思います。

これからアプリを作る方に伝えたいのは、これだけです。コードを書けなくても、あなたにしかできない仕事があります。 作ったものを毎日使って、違和感を言葉にすることです。

血圧記録アプリの次に作った節約記録アプリの話は、節約記録アプリを作った理由の記事に書いています。

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