作ったあとに、もう一つの壁がある
アプリができた。動く。バグも直した。さあ Google Play で公開しよう。
ここで、個人開発者の多くが立ち止まります。Google Play で新しくアプリを公開するには、クローズドテストで一定人数のテスターを集め、その人たちに14日間続けて使ってもらう必要があります。まだ誰も知らないアプリを、十数人の他人に、2週間使ってもらわなければならない。
作ることより、こちらのほうがはるかに難しいと思いました。私はXで募集することにしました。
続けられないと思ったから、自動化した
ただ、始める前から分かっていたことがあります。私は毎日投稿し続けられない。
平日は会社があります。夜には開発もしたい。「今日の投稿文を考える」という作業が毎日発生したら、三日で止まる自信がありました。
だから2026年6月27日、AIと一緒に、こういう仕組みを組みました。
- 投稿文を12種類つくる。 同じ文章を毎日出すと飽きられるので、ワードバトルの紹介4種・節約記録アプリの紹介4種・2本まとめての紹介4種を用意して、日替わりで回す
- 毎朝8時1分に、その日の分をGmailの下書きに入れる。 件名は「【今日のXテスター募集】6/28 投稿文」、本文の1行目は「▼ そのままXにコピペで投稿してください」
- 私はコピペして投稿するだけ
考える作業がゼロになりました。我ながら、よくできた仕組みだと思いました。
仕組みは、一度も止まらなかった
毎朝8時1分、必ず下書きができている。文面は12種類を順番に回っていく。出張中でも、疲れて帰った日でも、下書きは用意されていました。

節約記録の記事で「置き換える節約は疲れても崩れない」と書きましたが、これも同じです。仕組みにした瞬間、続けることが問題でなくなりました。
50日目に、確認した
8月16日。ふと思い立って、応募フォームの回答を確認しました。
回答数:0件。
正確には1件ありましたが、それは構築した日に自分でテスト送信した「テスト太郎」でした。50日間、毎朝欠かさず投稿して、応募はゼロ。
がっかりしました。テスターを集めるのは、こんなに難しいのかと感じました。
受け皿も壊れていた
調べていくと、さらに悪い事実が3つ出てきました。
① 自動返信が、サーバーに置かれていなかった。 応募があったら案内メールを返す仕組みも作ってあったのですが、中身は空のまま、実行の設定もゼロ件でした。仮に誰かが応募してくれていたとしても、返信は届かなかったのです。
② 本名の入力を必須にしていた。 見ず知らずの個人開発者のアプリを試すために、本名を書かされる。私が応募する側なら、まず書きません。
③ 応募直後に案内するリンクが、その時点では死んでいた。 Google Play のテスト参加リンクは、開発者がその人のメールアドレスをテスターリストに登録するまで有効になりません。応募した人が案内のリンクを踏むと「お探しのページは見つかりません」と表示される。いちばん意欲が高い瞬間に、エラーページを見せる設計になっていました。
50日間、私は「応募が来たら万全」だと思いながら投稿していました。実際には、受け皿が壊れていました。
数字は「文章の問題ではない」と言っていた
| 項目(8月16日の実測) | 数 |
|---|---|
| Xのフォロワー | 38人 |
| 総ポスト数 | 230件 |
| 募集の固定ポストの表示回数 | 65回 |
| いいね | 1 |
| 返信・リポスト | 0 |
230回投稿して、募集の固定ポストを見た人は65人。
この数字を見るまで、私は「文面が悪いのかもしれない」と思っていました。だから投稿文を12種類も用意して、順番に回していたのです。でも、母数が無いところで文章を工夫しても意味がありません。投稿文の改善では、この問題は解決しませんでした。
もう一つ、面白いことがありました。当時、テスターがゼロだったわけではありません。ワードバトルに5人、節約記録に4人いました。その全員が、フォームを経由していませんでした。 直接やりとりをして、私が手動で登録した人たちです。50日かけて作り込んだ導線は、一人も運んでいなかったのです。
自動化が、失敗に気づくのを遅らせた
ここが、この経験でいちばん学んだところです。
もし毎日手作業で投稿文を考えていたら、たぶん2週間で「これ、意味あるのか?」と思ったはずです。手間がかかるものは、効果を疑うきっかけになります。
でも私の仕組みは、手間がゼロでした。朝、コピペする。それだけ。負担がないから、疑問も湧かない。成果が出ていないのに、続けることだけは完璧にできてしまった。
自動化は「続ける」という問題を解いてくれました。でも「届く」という問題は、まったく解いていませんでした。そして、続けるコストが下がったぶん、届いていないことに気づくのが遅れました。
8月16日に作り直し、8月20日に止めた
原因が分かってからは早かったです。8月16日、応募フォームをやめて、Googleグループに参加するだけでテスター登録が終わる形に変えました。承認待ちなし、1回の参加で2アプリ両方のテスターになれます。リンク先が変わったので、12種類の文面も全部書き直しました。
そして4日後の8月20日。私はこう言いました。
こちらのルーティンは一旦停止したいと思います。
毎朝8時1分の自動下書きを、無効にしました。削除ではなく無効化にしたのは、また使うかもしれないからです。54日間続いた仕組みが、ここで終わりました。
文面を直しても、リンク先を直しても、届く相手がいないという問題は残っていたからです。続けるべきは投稿ではなく、場所を変えることでした。
何が間違っていたのか
整理すると、3つです。
- リーチが無い。 38フォロワーでは、何を投稿しても届きません。Xでは外部リンクの付いた投稿は広がりにくいとも言われていて、募集の投稿はもともと不利でした
- 導線に摩擦がある。 本名必須、死んだリンク、届かないメール
- 相互性の無い場所で募集していた。 そして、これが本丸でした
一般の方に「テストしてください」と呼びかけても、相手には何の得もありません。でも開発者どうしなら違います。同じ制度の前で、同じように困っている。「あなたのアプリを入れるので、私のアプリも入れてください」が成立します。
クローズドテストのテスターは、開発者が集まる場所で、相互に助け合って集めるのが定石でした。私はそこに、一切いませんでした。
場所を変えたら、4日で12人
募集する場所を、Android の開発者どうしが相互にテストし合うコミュニティに変えました。
| 募集した場所 | 期間 | 集まったテスター |
|---|---|---|
| 応募フォーム+X | 50日 | 0人 |
| 開発者のコミュニティ | 4日 | 12人 |
3本目のアプリの募集を始めたのが9月14日。その4日後、9月18日に12人が揃い、14日間のカウントが始まりました。50日かけて0人だったものが、場所を変えたら4日で12人でした。
もちろん、書き込めば勝手に集まるわけではありません。こちらが先に相手のアプリを入れて、実際に触った感想を書く。その順番の話は、先に入れて頼んだら26時間で10人集まった記事に書いています。
1本目と2本目のアプリは、その前に公開までたどり着きました。ワードバトルが9月4日、節約記録が9月10日です。どちらも、フォームからは一人も来ていません。
同じ壁の前にいる方へ
もし今、テスターが集まらなくて悩んでいる方がいたら、50日分の失敗から言えることは3つです。
- フォロワーが少ないうちに、一般の方へ向けて募集しても届きません。 文章の問題ではなく、母数の問題です
- 開発者が相互にテストし合う場所を探してください。 そこが正解でした
- 作業を自動化するなら、その作業が効いているかを測る仕組みも一緒に作ってください。 「毎週月曜に応募数を報告する」という一行を足しておけば、50日ではなく7日で気づけたはずです
自動化したことは、今も後悔していません。続けられない性格の私が54日続けられたのは、あの仕組みのおかげです。
私は50日かけて、この3つに気づきました。この記事を読んだ方は、その50日を飛ばせます。

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