AIとの会話には「持ち時間」がある — 引き継ぎノートという発明

開発が乗ってきた時に限って

AIと一緒に開発をしていると、必ずぶつかる問題があります。

会話が長くなりすぎると、続けられなくなるのです。

私が実際に送ったメッセージが残っています。

制限時間になってしまいました。一度すべて閉じてまた明日再開したいですが、問題ありませんか?

そしてこちらは、ワードバトルを Google Play に出す作業の途中でのメッセージです。

こちらのチャットですが、「セッション制限の90%を使用しました」と表示されました。

また、新しいチャットで続きからのサポートをお願いしたいです。

作業が一番乗ってきたところで、時間切れになる。仕方なく新しい会話を始める。

そして新しい会話のAIは、それまでの経緯を何も知りません。

ゼロからの説明が毎回必要だった

最初のころ、私は毎回こんなことをしていました。

新しい会話を開いて、「節約記録アプリを作っています」から始める。どこまで進んだか説明する。ファイルがどこにあるか説明する。前回何で詰まったか説明する。

そしてまた時間切れになり、また最初から説明する。

これは想像以上に消耗しました。作業そのものより、状況説明のほうに時間がかかる日すらありました。

私がやり始めたこと

そこで、あるとき私はこう書き始めました。

アプリ開発、学生向けの人気アプリ「ワードバトル」の開発の続きとなります。

下記が以前他のチャットでサポートいただいていた時からの引継ぎ内容となります。

引き続きこちらでサポートをよろしくお願いいたします。

【引き継ぎ情報】ワードバトル Google Play 公開作業の続き

現在の進捗:

* ✅ Phase 1:Capacitor セットアップ完了

* ✅ Phase 2:AndroidManifest.xml 修正完了

* ✅ Phase 3:AABビルド完了

* ✅ Phase 4:Google Play Console でアプリ作成・内部テスト公開完了

* 🔄 現在作業中:ストアの掲載情報

会話が終わる前に、状況をまとめたテキストを作っておく。次の会話は、それを貼り付けてから始める。

たったこれだけのことです。プログラミングの知識は一切要りません。

でもこれで、状況説明にかかる時間が数分の一になりました。

いつのまにか、ファイルになっていた

この「引き継ぎ情報」は、続けるうちに育っていきました。

最初はチャットに貼り付けるテキストでしたが、今はパソコンの中の1つのファイルになっています。中身はこんな構成です。

  • ファイルの地図(どこに何があるか)
  • 各アプリの現在の状態
  • すぐやること
  • 待ち案件(審査待ちなど、自分では進められないもの)
  • 環境の落とし穴(このパソコンで動かない物、その回避策)
  • よく使うコードの断片

作業が一区切りついたら、このファイルを更新して、日付を進めた新しいファイルにする。次に始めるときは、まずこれを読ませる。

AIの記憶を、AIの外側に置いたわけです。

一行だけ、警告を足した

このノートには、ある時から一行の警告を書き足しました。

引き継ぎノートの記述を鵜呑みにしない。

理由があります。

以前、ノートに「8月29日に、Google Play へ製品版の申請をした」と書かれていたことがありました。

ところが管理画面は、申請日を「今日、19:35」「金曜日, 19:35」という相対的な表記でしか出しません。それを日付に書き起こすときに、2日ずれていたのです。

ずれたまま「審査の結果が出るのは9月5日ごろ」という見込みを立て、次の会話もその前提で動いていました。過去の画面の記録をさかのぼって照合し、本当は8月31日だったと分かったのは、数日あとのことです。

同じことは、その後もう一度ありました。ノートに「未確認」と書かれていた設定が、実際には3か月前に済んでいたのです。

AIが書いた記録も、間違うことがあります。

だから今は、日付や数値のように判断を左右する情報については「必ず実物を確認せよ」とノート自身に書いてあります。

記録ではなく実物を見る。同じ話は広告を実装したのに、1円も入らなかった理由でも書きました。

AIと長く付き合うということ

これは技術の話ではなく、付き合い方の話だと思っています。

AIはものすごく優秀ですが、会話が変われば記憶は消えます。これは欠陥ではなく、そういう仕組みだというだけのことです。

実際、同じ不具合が3回戻ってきたこともありました(同じバグが3回戻ってきた話)。

だとすれば、人間側がやることは決まっています。

記憶を外に置く。そして、その記録を盲信しない。

使うけれど、確かめる。信頼するけれど、任せきりにしない。

52歳の私がAIと5ヶ月半やってきて身についたのは、結局この距離感でした。

明日から使える形にまとめると

同じようにAIと長期の作業をする方へ、最小限のやり方を書いておきます。

  1. 会話が長くなってきたら、終わる前に「ここまでの引き継ぎ情報をまとめて」と頼む
  2. 出てきたテキストをファイルに保存する
  3. 次の会話は、そのファイルを貼り付けてから始める
  4. ファイルの内容が古くなったら更新する
  5. 数字と日付だけは、ノートを信じずに実物で確認する

これだけです。プログラミングは要りません。

そして私の実感では、これがこの5ヶ月半で最も効果があった工夫でした。

なお、そのノートだけでは足りなくなる日も来ました。アプリが4本になり、ブログも始まると、引き継いだ先の会話がすぐに埋まってしまうのです。そこで9月19日から、会話そのものを仕事ごとに4つに分けました。

その話は、次に書きます。


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