2026年4月1日、私は一日中パソコンの前で負けていた
私のアプリ開発は、アプリを作りたくて始まったわけではありません。
記録を遡ると、すべての起点は2026年4月1日です。そしてこの日、私が作ろうとしていたのはアプリではありませんでした。
工場で作業員が転倒する動画です。
なぜ、そんな動画を作ろうとしていたのか
私の本業は、工場の安全教育です。
安全教育というのは、なかなか難しい仕事です。「ケーブルにつまづかないように」と口で言っても、人は聞き流します。実際の災害事例を見せるのが一番効くのですが、当然ながら本物の事故映像など都合よく手に入りません。
だったら作ればいい。AIで。そう考えたのが始まりでした。
朝から夕方まで、動画は1本もできなかった
その日の記録に残っている最初のメッセージは、朝8時39分。AIで画像や動画を作るツール(ComfyUI)に、拡張機能のボタンが出てこない、という相談でした。
設定ファイルを直す。起動ログを貼る。コマンドを打つ。結果を貼る。また違う。このやり取りだけで、記録は3万7千字を超えていました。
昼過ぎには、今度は「メモリが足りない」というエラー。夕方になって、ようやく動画の中身を考えるところまで来ました。AIへの指示文には、こんな場面を書いています。
2台の巨大な白い機械が、太い多色のケーブルでつながれていて、そのケーブルは通路を横切る形で床の上に直接置かれている。
通路を横切るケーブル。 これが、安全教育で伝えたかった、まさにその危険源です。
それでも、この日のうちに動画は完成しませんでした。
夜21時22分、私は3行だけ書いた
その日の夜。私は同じAIに、まったく別のことを頼みました。
以下のスマホアプリを作ってください。
①毎日朝と夜に測る血圧値を記録する。
②記録した血圧値を表に出力する。
③記録した血圧値を様々な様式で分析する。
これが、私の1本目のアプリの「発注書」の全文です。
画面の設計も、色も、使う技術も、何ひとつ指定していません。というより、指定できるだけの知識がありませんでした。
なぜ急にアプリだったのか。正直、当時の頭の中は記憶に残っていません。たぶん、一日中うまくいかなかった反動だったのだと思います。何か一つ、動くものが見たかった。
数分後、動くものが出てきた
そして数分後、画面に動くアプリが表示されました。
記録タブがあって、日付と朝/夜を選んで、上の血圧と下の血圧と脈拍を入れる。入れた瞬間に「正常」「高血圧Ⅰ度」といった判定が出る。一覧タブがあって、分析タブがある。
3行しか書いていないのに、私が欲しかったものがだいたい出てきました。
一日中動かなかった動画とは、まるで逆でした。このときの衝撃は、今でもはっきり覚えています。私が次に書いたメッセージがそれを物語っています。
素晴らしいアプリを作ってくれてありがとうございます。
このアプリを自分のスマホにインストールする方法を教えてください。
スマホに入れるまでが、長かった
ここからが、長い道のりの始まりでした。動くアプリを作ることと、それを自分のスマホに入れることは、まったく別の話だったのです。
最初に教わったのは、ブラウザで開いて「ホーム画面に追加」を押す、PWA という方法でした。そこから「ちゃんとしたアプリとして入れたい」と欲を出して、最初の壁にぶつかります。その話はPWA の最初のつまずきの記事に書きました。
注文は、どんどん細かくなっていった
面白いのは、この後の私の注文の変化です。最初は3行だったのに、使っているうちに要望がどんどん具体的になっていきました。
- 朝/夜だけでなく昼も選べるようにしてほしい
- 測定時刻を自分で指定できるようにしてほしい
- 一覧を Excel ファイルで出力してスマホに保存したい
- 体温と体重と歩数の入力欄を追加してほしい
- Excel の書式を添付の写真のフォーマットにしてほしい
- 保存した Excel を読み込んでアプリに戻せるようにしてほしい
- 分析レポートを A4用紙1枚の Word ファイルで出力したい
- グラフの表示期間を月単位で選べるようにして、横スクロールさせたい

我ながら、注文が多い。でもこれは、アプリを毎日使っていたからこそ出てきた要望です。使っていなければ「Excel の時刻列が抜けている」なんて気づきません。
未経験者にとって、何が本当に難しかったか
振り返って思うのは、難しかったのはコードではなかったということです。コードは私が書いていません。書けません。それはAIがやってくれます。
| やること | 難易度 |
|---|---|
| 「こういう機能が欲しい」と言葉にする | 意外とできる |
| コードを書く | AIがやる |
| スマホに入れる | とても難しい |
| 実機で試して、おかしい所を見つける | 自分にしかできない |
| Google Play に出す | これが一番難しかった |
「AIが作ってくれるから簡単」ではありません。作った後のほうが、はるかに長い。 でも逆に言えば、コードが書けないことは、もはや障害ではなくなりました。
動画づくりは、その後も続いている
念のため書いておくと、動画のほうを諦めたわけではありません。4月7日にはケーブルにつまずいて転倒する場面の動画を作り、5月には VR 用の360°動画で「危険箇所を見つける訓練」ができないかも相談しています。
安全教育のコンテンツをAIで作る、という発想は今も生きています。アプリ開発で身につけたことが、いずれそこに戻ってくる予感があります。
振り返って
あの日、もし動画のツールがあっさり動いていたら、私はアプリを作っていなかったかもしれません。
一日中うまくいかなくて、それでも何かを作りたくて、夜に3行の注文を書いた。その3行が、半年で5本のアプリになりました。
うまくいかない日というのは、案外そういう日なのかもしれません。
血圧記録アプリを使い始めてすぐに出会った、最初の不具合の話はキーボードが消えるバグの記事に書いています。

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