一日うまくいかなかった夜に、3行で最初のアプリを頼んだ ― 52歳、プログラミング未経験の始まり

2026年4月1日、私は一日中パソコンの前で負けていた

私のアプリ開発は、アプリを作りたくて始まったわけではありません。

記録を遡ると、すべての起点は2026年4月1日です。そしてこの日、私が作ろうとしていたのはアプリではありませんでした。

工場で作業員が転倒する動画です。

なぜ、そんな動画を作ろうとしていたのか

私の本業は、工場の安全教育です。

安全教育というのは、なかなか難しい仕事です。「ケーブルにつまづかないように」と口で言っても、人は聞き流します。実際の災害事例を見せるのが一番効くのですが、当然ながら本物の事故映像など都合よく手に入りません。

だったら作ればいい。AIで。そう考えたのが始まりでした。

朝から夕方まで、動画は1本もできなかった

その日の記録に残っている最初のメッセージは、朝8時39分。AIで画像や動画を作るツール(ComfyUI)に、拡張機能のボタンが出てこない、という相談でした。

設定ファイルを直す。起動ログを貼る。コマンドを打つ。結果を貼る。また違う。このやり取りだけで、記録は3万7千字を超えていました。

昼過ぎには、今度は「メモリが足りない」というエラー。夕方になって、ようやく動画の中身を考えるところまで来ました。AIへの指示文には、こんな場面を書いています。

2台の巨大な白い機械が、太い多色のケーブルでつながれていて、そのケーブルは通路を横切る形で床の上に直接置かれている。

通路を横切るケーブル。 これが、安全教育で伝えたかった、まさにその危険源です。

それでも、この日のうちに動画は完成しませんでした。

夜21時22分、私は3行だけ書いた

その日の夜。私は同じAIに、まったく別のことを頼みました。

以下のスマホアプリを作ってください。

①毎日朝と夜に測る血圧値を記録する。

②記録した血圧値を表に出力する。

③記録した血圧値を様々な様式で分析する。

これが、私の1本目のアプリの「発注書」の全文です。

画面の設計も、色も、使う技術も、何ひとつ指定していません。というより、指定できるだけの知識がありませんでした。

なぜ急にアプリだったのか。正直、当時の頭の中は記憶に残っていません。たぶん、一日中うまくいかなかった反動だったのだと思います。何か一つ、動くものが見たかった。

数分後、動くものが出てきた

そして数分後、画面に動くアプリが表示されました。

記録タブがあって、日付と朝/夜を選んで、上の血圧と下の血圧と脈拍を入れる。入れた瞬間に「正常」「高血圧Ⅰ度」といった判定が出る。一覧タブがあって、分析タブがある。

3行しか書いていないのに、私が欲しかったものがだいたい出てきました。

一日中動かなかった動画とは、まるで逆でした。このときの衝撃は、今でもはっきり覚えています。私が次に書いたメッセージがそれを物語っています。

素晴らしいアプリを作ってくれてありがとうございます。

このアプリを自分のスマホにインストールする方法を教えてください。

スマホに入れるまでが、長かった

ここからが、長い道のりの始まりでした。動くアプリを作ることと、それを自分のスマホに入れることは、まったく別の話だったのです。

最初に教わったのは、ブラウザで開いて「ホーム画面に追加」を押す、PWA という方法でした。そこから「ちゃんとしたアプリとして入れたい」と欲を出して、最初の壁にぶつかります。その話はPWA の最初のつまずきの記事に書きました。

注文は、どんどん細かくなっていった

面白いのは、この後の私の注文の変化です。最初は3行だったのに、使っているうちに要望がどんどん具体的になっていきました。

  • 朝/夜だけでなく昼も選べるようにしてほしい
  • 測定時刻を自分で指定できるようにしてほしい
  • 一覧を Excel ファイルで出力してスマホに保存したい
  • 体温と体重と歩数の入力欄を追加してほしい
  • Excel の書式を添付の写真のフォーマットにしてほしい
  • 保存した Excel を読み込んでアプリに戻せるようにしてほしい
  • 分析レポートを A4用紙1枚の Word ファイルで出力したい
  • グラフの表示期間を月単位で選べるようにして、横スクロールさせたい
血圧記録アプリの記録画面。日時・朝昼夜・血圧と心拍数・体温と体重と歩数・備考の入力欄が並ぶ
注文を重ねたあとの記録画面。「昼」の区分や、体温・体重・歩数の欄が増えている(入力欄の数字は見本の値です)

我ながら、注文が多い。でもこれは、アプリを毎日使っていたからこそ出てきた要望です。使っていなければ「Excel の時刻列が抜けている」なんて気づきません。

未経験者にとって、何が本当に難しかったか

振り返って思うのは、難しかったのはコードではなかったということです。コードは私が書いていません。書けません。それはAIがやってくれます。

やること 難易度
「こういう機能が欲しい」と言葉にする 意外とできる
コードを書く AIがやる
スマホに入れる とても難しい
実機で試して、おかしい所を見つける 自分にしかできない
Google Play に出す これが一番難しかった

「AIが作ってくれるから簡単」ではありません。作った後のほうが、はるかに長い。 でも逆に言えば、コードが書けないことは、もはや障害ではなくなりました。

動画づくりは、その後も続いている

念のため書いておくと、動画のほうを諦めたわけではありません。4月7日にはケーブルにつまずいて転倒する場面の動画を作り、5月には VR 用の360°動画で「危険箇所を見つける訓練」ができないかも相談しています。

安全教育のコンテンツをAIで作る、という発想は今も生きています。アプリ開発で身につけたことが、いずれそこに戻ってくる予感があります。

振り返って

あの日、もし動画のツールがあっさり動いていたら、私はアプリを作っていなかったかもしれません。

一日中うまくいかなくて、それでも何かを作りたくて、夜に3行の注文を書いた。その3行が、半年で5本のアプリになりました。

うまくいかない日というのは、案外そういう日なのかもしれません。

血圧記録アプリを使い始めてすぐに出会った、最初の不具合の話はキーボードが消えるバグの記事に書いています。

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